遺品整理の手順

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大切なご家族を亡くされた後、いざ遺品整理を始めようとしても「何から手を付ければ良いのか」「どう進めれば効率的か」戸惑う方は多いでしょう。ここでは遺品整理の基本的な手順を解説します。始める前の準備から具体的な作業の流れ(仕分け・整理・処分・供養)、そして必要な道具まで、順を追って説明します。初めて自分で遺品整理を行う方でも分かりやすいよう、ポイントを押さえて解説しますので参考にしてください。

遺品整理を始める前に準備すること

遺品整理に取り掛かる前に、以下の準備を済ませておきましょう。

  • 親族・相続人への連絡と打ち合わせ: 遺品整理は故人の遺産整理の一環でもあります。他の相続人や親族がいる場合、事前に連絡して了承を得てから始めることが大切です​。勝手に処分を始めてしまうと、「自分の許可なく遺産を処分された」とトラブルになる可能性があります。誰が主体となって遺品整理を進めるか、作業日程や費用負担をどうするか、あらかじめ話し合って決めておきましょう。
  • 重要書類・貴重品の捜索: 遺品整理に着手する前に、まず遺言書の有無を確認します。公正証書遺言でなければ、自宅の金庫や机の引き出しなどを探してみましょう(発見した場合の扱いについては「法律・手続き」のページ参照)。併せて権利証(不動産の権利書)や預金通帳、印鑑、保険証券、身分証明書類など今後の手続きに必要となる書類や貴重品を探し出し、安全に保管しておきます。これらが見つかった場合、すぐに遺品整理を始めず先に専門家(司法書士や弁護士等)に相談した方が良いケースもあります。
  • 処分方針の確認: 家財道具のうち形見分けしたいもの(写真や思い出の品、記念品など)や、特定の親族が引き取りたいと希望する物がないか確認しておきましょう。例えば「この時計は孫に譲りたい」など希望があれば事前に共有します。また、家具家電でリサイクルやリユースしたい物があればリストアップしておきます。売却や寄付を検討することで、廃棄する量を減らせるかもしれません。
  • 作業日程と人員の確保: 自力で行う場合でも、一人では限界があります。可能な範囲で家族や親戚、友人に協力を依頼し、作業日を調整しましょう。週末数回に分けるのか、連休にまとめて行うのか、無理のない計画を立てます。遠方に住んでいる親族が参加する場合は交通手段や宿泊先の手配も考慮します。参加者には当日の集合時間や持ち物(軍手・マスク等)も事前に伝えておくと親切です。
  • 必要な道具の準備: 後述する道具類を事前に揃えます。特に大量のゴミ袋段ボール箱、ガムテープなどは多めに用意しておきましょう。自治体指定のゴミ袋がある場合はそちらを購入します。また、粗大ごみ処分券が必要なら役所やコンビニで買っておきます。

以上を準備した上で、心構えとして「できるだけ遺品を丁寧に扱おう」「無理せずマイペースで進めよう」といった心の準備もしておくとよいでしょう。では具体的な手順に移ります。

チェックリスト

遺品整理の作業の流れ(仕分け・整理・処分・供養)

遺品整理の基本的な流れは、「仕分け」→「整理(保管)」→「処分」→「供養(必要に応じ)」の順序になります。それぞれのステップでのポイントを解説します。

1. 遺品の仕分け

まず最初に行うのが仕分け作業です。遺品の量が膨大でも、3つのカテゴリに分類するとスムーズに進みます。「何から手を付けていいか分からない」という場合も、この3分類を意識しましょう​。

《仕分ける3つのカテゴリ》

  1. 形見として残すもの(貴重品・思い出の品など)
  2. リユース・リサイクル可能なもの(再利用できる家具・家電・衣類など)
  3. 廃棄するもの(上記以外の不要品すべて)

まず貴重品や思い出の品(形見品)とそれ以外を大きく分けます​。貴重品には現金、通帳、証券類、宝石・骨董品、写真や手紙などが該当します​。これらは大切に保管し、親族で形見分けするものは別途まとめておきます。

次に、残った遺品の中から再利用できそうなものを選別します。家具・家電で状態が良いものはリサイクルショップでの買い取りや、欲しい方への譲渡を検討できます。衣類や日用品も未使用品があればリサイクル資源になります。一方で傷みが激しいものや古すぎる電化製品などはリサイクルが難しいため「廃棄」カテゴリーに回します。

ポイント: 部屋全体をいきなり仕分けようとせず、部屋やエリアごとに区切って作業すると効率的です​。例えば「今日はリビングとキッチンの物を仕分ける」と範囲を決め、次に「寝室と押入れを仕分ける」というように段階的に進めます。また、大きな家具から先に移動・解体して空間を確保すると、残りの仕分けが楽になります。

仕分け作業中に判断に迷う品が出てくるのはよくあることです。その場合は無理に即決せず、「保留箱」を用意してひとまずそこに入れておきましょう​。後で落ち着いてから再検討すれば、不要と判断できることもあります。焦って捨ててしまい後悔するのを防ぐためにも、迷ったら一時保管が基本です。

2. 仕分けた遺品の整理・処分

仕分けが一通り終わったら、各カテゴリごとに整理・処分の作業に移ります。

  • 形見品の整理: 貴重品や思い出の品は、相続人や親族間で分配(形見分け)します。どの品を誰が引き取るか話し合い、リストを作って記録しておくと後々安心です。写真アルバムなど皆で共有したいものはデジタル化して配布する方法もあります。また仏壇や神棚、お守りといった宗教的な遺品は、菩提寺(お寺)や神社に相談し、お焚き上げ供養を検討します。この供養については後述します。
  • リユース品の整理: 再利用できる家具・家電・衣類などは、売却・譲渡の手配を行います。具体的にはリサイクルショップや中古買取業者に問い合わせ、出張査定を依頼します。買い取ってもらえれば処分費用の軽減になりますし、故人の品を次に活かすことにもなります。ただし買取金額がつかないものも多いので、その場合は自治体のリサイクルセンターや知人への譲渡を検討します。大型家具で欲しい人がいなければ、解体して粗大ごみで出す準備をします。
  • 廃棄品の処分: ゴミとして処分するものは、自治体の分別ルールに従ってまとめます。可燃ごみ・不燃ごみ・資源ごみ等に分類し、指定袋に入れて収集日に出せるよう準備します。大量のごみが出る場合、一度では出し切れないので何週かに分けて出す計画を立てましょう。また、粗大ごみ(家具・寝具・家電など)は自治体の粗大ごみ受付に連絡して収集日を予約するか、直接クリーンセンターへ持ち込む手配をします。冷蔵庫・テレビ・洗濯機・エアコンは家電リサイクル法対象品なのでリサイクル券を購入し、指定方法で処分します。自力で困難な場合、不用品回収業者に依頼する方法もあります。ただし無許可業者は不法投棄の恐れもあるため、信頼できる業者か確認が必要です。

整理・処分のコツ: 不用品を処分する際、「自治体回収」「業者依頼」「買取」のどれが最適かを見極めます​。自治体回収は安価ですが量と日程に限界があります。業者依頼は迅速ですが費用がかかります。買取はお金になる反面、手間もかかります。例えば家電類は新しければ買取、それ以外は自治体処分、家具は大型なら業者回収…といった具合に、品目ごとに最適な方法を選びましょう。

形見分け

3. 遺品の供養

遺品の中には、ただ捨てるのは忍びないと感じるものもあるでしょう。特に写真・手紙・人形・愛用品など、故人の魂が宿っていそうに思える品は「ゴミとして処分してしまってよいのか」と悩むことがあります。そうした場合は「遺品供養」という形で処分する方法があります。

具体的には、お寺や神社でお焚き上げと呼ばれる供養を行ってもらいます。お焚き上げとは、故人の遺品を僧侶や神職にお経・祝詞とともに焚火で燃やして供養する儀式です。これによって「ありがとう」の気持ちで天に送り出すことができます。写真や人形、愛用していた衣服などはお焚き上げを依頼する遺族も少なくありません。

遺品整理業者の中にも、遺品供養サービスをオプションで提供しているところがあります。専門業者に依頼する場合は、自分で寺社に持ち込む手間が省けるメリットがあります。ただし費用がかかる点と、形見の一部を業者に預ける形になる点は理解しておきましょう。供養を希望する品がある場合、事前に業者へ伝えて適切に分別してもらうことが大切です​(重要品を適当にまとめて処分してしまう業者もいるため、信頼できる業者選びが重要です​)。

供養が終わった遺品の灰やお札は、後日手元に戻されるか寺社で処分されます。返却された場合は故人ゆかりの場所に埋葬するなどすると良いでしょう。供養は必須ではありませんが、「どうしてもゴミとして捨てづらい」というお気持ちがある場合の選択肢として覚えておいてください。

4. 最終確認と清掃

全ての仕分け・処分が終わったら、最後に最終確認を行います。押入れや棚の引き出しの隅に取り忘れた物がないか、家中くまなくチェックしましょう。特に重要書類や貴重品は念入りに確認します。「うっかり捨ててしまっていた」という事態を防ぐため、ゴミ袋の中も一応目視で確認しておくと安心です​。

問題がなければ、部屋の清掃に取り掛かります​。長年使っていた家は、家具をどかすと埃や汚れが溜まっています。掃き掃除・拭き掃除を丁寧に行い、必要に応じて掃除機や雑巾、洗剤などで隅々まで綺麗にします。床や畳にシミがある場合や、臭いが染み付いている場合はプロのハウスクリーニングや消臭サービスを利用するのも良いでしょう。

賃貸物件の場合は、清掃後に管理会社や大家さんに連絡し退去の立ち会いをお願いして完了です。持ち家の場合でも、今後売却やリフォームをするならこの段階できれいにしておくと後工程が楽になります。

以上が一連の遺品整理の手順となります。仕分け→整理→処分→供養→清掃という流れを踏めば、大きな漏れもなく作業を終えられるでしょう。自分で行うには大変な作業ですが、一つひとつ片付けていけば必ず終わりが見えてきます。どうしても難しい場合は無理せず専門業者へ依頼することも検討してください。

遺族の部屋を掃除する女性と男性

遺品整理に必要な道具・準備物

自分で遺品整理を行う際には、あらかじめ道具類を揃えておくと作業がスムーズです。以下に必要な資材・道具をリストアップします​。ホームセンターやネット通販で購入できるものばかりなので、事前に準備しておきましょう。

  • 作業用の服装・保護具
    • 動きやすく汚れても良い服(作業着やジャージ等)
    • 軍手(手を保護し、埃や汚れから守る)
    • マスク(埃やカビを吸い込まないようにする)
    • スリッパまたは安全靴(室内で足を保護する)
    • ゴーグル(埃がひどい場合は目を保護するため)
  • 仕分け用の資材
    • 段ボール箱(仕分けた品を一時保管する箱。大小複数用意)
    • ゴミ袋(可燃・不燃用に大量に用意。自治体指定袋があればそれを)
    • ガムテープ(段ボールの封や、袋の口を閉じるのに使用)
    • マジックペン(段ボールに中身を記入する、仕分けカテゴリーを書く)
    • 付箋紙・ラベル(「形見」「保留」など分類名を書いて貼ると分かりやすい)
  • 工具類
    • カッターナイフ・ハサミ(梱包材カットや袋開封に必須)
    • ドライバー、六角レンチ、ペンチ(家具の分解、ネジ外しに使用)
    • ロープ・ひも(束ねる、家具を固定する、搬出時に使う)
    • バール(かなづち)(家具解体や釘抜きに) ※必要に応じて
    • 脚立(高所の荷物を下ろすのに) ※高い棚がある場合
  • 運搬用具
    • 台車(重い家具や大量の箱を運ぶのに便利)
    • 梱包用ストレッチフィルム(散らばりやすい物をひとまとめに巻く)
    • 軽トラック・ワゴン車(大量のゴミを処分場に運ぶ場合や、大物を運搬する際に)※レンタカーでも可
  • 清掃用具
    • ほうき・ちりとり、掃除機(最後の清掃に使用)
    • モップ、雑巾、バケツ(床拭き掃除用)
    • 洗剤類(カビ取り剤、住居用洗剤など必要に応じ)
    • 消臭剤(臭いがこもっている場合に)
  • その他
    • ビニールシート・新聞紙(床に敷いて作業すると掃除が楽)
    • 飲み物・軽食(長時間作業になるので水分補給や休憩用に)
    • カメラ(作業前後の記録用。後述する不動産売却等でビフォーアフターを記録しておくと役立つ場合があります)

以上が代表的な準備物です。​

遺品整理では仕分けが中心となるため仕分け用の資材を充実させておくことがポイントです。特にゴミ袋と段ボール箱は多めに用意し、途中で足りなくならないようにしましょう。

また、作業中は埃を大量に吸い込んだり思わぬ危険が伴う可能性もあるため、服装や保護具にも気を配ってください​。軍手・マスクは必須で、可能なら作業用の帽子やエプロン等で体を覆うと安心です。ケガ防止のためサンダル履きは避け、靴を履いて作業しましょう。

道具を万全に揃えておけば、当日の作業効率が格段に上がります。反対に道具不足だと「これが無いから作業中断」という事態にもなりかねません。想定される作業内容に合わせて必要なものをチェックリスト化し、漏れなく準備して臨んでください。

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