安全性の比較: 独立系に依頼しても大丈夫か?

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最後に、多くの管理会社が最も重視する安全性の問題です。エレベーターは人命を預かる設備であり、「費用が安くても安全面で劣るようでは困る」という懸念はもっともです。ここでは独立系とメーカー系の安全性・信頼性の違いについて検証します。

点検・検査体制の違いは?

結論から言えば、独立系だからといって保守点検の質が劣ることはありません。エレベーターの定期点検項目は建築基準法および各メーカーの保守基準によって定められており、独立系であってもその内容に大きな差異はないのです。実際、メーカー系と独立系で点検内容に遜色はなく、独立系も目視・触診を駆使した綿密な点検を実施して安全を確保しています。

また法律により年1回の法定検査が義務付けられており、この検査は国土交通大臣の認定した昇降機検査資格者が行います。独立系保守会社でも自社に検査資格者を擁している場合が多く、仮にいなくとも外部の検査機関と連携して必ず法定検査を実施します。報告結果は役所に届け出る必要があるため、独立系だからといって怠れば行政処分の対象となります。要するに、どの会社であっても法令遵守は徹底されているのです。

(※なお、新設後間もないエレベーターについては、メーカーの無償保証期間との兼ね合いから保証期間中はメーカー系に任せ、その後に独立系への切替えを検討するのが無難でしょう。)

点検・検査体制の違いは?
点検・検査体制の違いは?

技術力・緊急対応力に差は?

「メーカー系の方が高度な技術情報を持っているのでは?」という疑問もあるでしょう。しかし独立系各社には前述の通りメーカーで経験を積んだベテラン技術者が多数在籍しており、ノウハウの蓄積という点でも遜色ありません。例えば独立系最大手JESは開発メーカーから提供される技術資料をもとに独自の遠隔点検システムを開発するなど、技術革新にも積極的に取り組んでいます。また独立系は全メーカー機種に対応する必要上、幅広い機種の知見が求められますが、50年以上の実績を持つ老舗独立系企業も存在し、旧型エレベーターから最新モデルまで幅広くカバーしています。

もちろん、超高層ビルの超高速エレベーターなど特殊なケースでは、引き続きメーカー系のほうがノウハウで勝る場面もあります。しかしオフィスビルやマンションで一般的に使われているエレベーターであれば、独立系でも十分対応可能です。むしろ近年ではIoT技術の活用や予兆保全(異常の早期検知)といった新技術の導入にも独立系が積極的であり、必ずしもメーカー系だけが最先端という状況ではありません。

緊急対応力に関しては、メーカー系は全国規模のネットワークを持つ強みがあります。しかし、独立系もシェア拡大に伴い主要都市への拠点展開を進めており、対応力が向上しています。実際、独立系上位5社だけで全国エレベーター台数の約20%(15万台以上)を管理しているとの報告もあり、独立系はもはや業界全体で重要な位置を占める存在となっています。先述の通り、緊急時の駆け付け体制は業者選定時に確認すべきポイントですが、信頼できる独立系を選びさえすれば過度に心配する必要はないでしょう。実際、近年独立系の保守による重大事故は発生しておらず、ユーザーからの信頼も高まっています。これは独立系各社が安全第一でサービス品質を維持している証拠と言えます。

安全性確保のためのポイント

独立系に依頼する場合でも安全性を万全にするため、管理会社として以下の点に留意しましょう。

信頼できる業者選定

最も重要なのは業者選びです。独立系と一口に言っても技術力や実績に差がありますので、過去のリニューアル実績や技術者の資格・経験を確認し、評判の良い会社を選定しましょう。必要であればエレベーター専門のコンサルタント等第三者の意見も仰ぐと安心です。

施工内容の確認

提案された工事内容が適切か、必要な安全装置の追加や老朽部品交換が網羅されているかをチェックします。疑問点があれば遠慮なく質問し、説明が不十分な業者は避けた方が無難です。

施工後の保守体制

工事後の保守契約を継続的に結び、定期点検や緊急対応をしっかり担ってもらうことで安全性を維持できます。独立系各社は24時間365日の緊急対応体制を整えているところも多く、夜間や休日の故障対応についても事前に確認しておきましょう。

法定検査の実施

年1回の法定検査は必ず実施し、検査結果報告書を管理組合で共有します。万一指摘事項があれば早急に是正工事を行うことで、安全性の担保と法令遵守を両立できます。

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