フルメンテナンス(FM)とPOG契約の違い|エレベーターメンテナンスの最適な契約設計とは

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そもそもFMとPOGは何を分けているのか

エレベーターメンテナンスの見積を取ると、ほぼ必ず出てくるのが「FM(フルメンテナンス)」と「POG」という言葉です。月額の数字だけを見ると、FMは高く、POGは安く見えます。しかし実際の違いは、支払い方法というより「リスクの持ち方」をどう設計するかにあります。

FMは、定期点検に加えて一定範囲の部品交換や修理費用を月額に含める契約です。突発的な出費が出にくい一方、毎月の固定費は上がります。POGは、点検は月額(または定額)で行うものの、部品交換や修理は都度見積で支払う契約です。月額は抑えられますが、故障や交換が重なる年は出費が増える可能性があります。

重要なのは、どちらが得かではなく「物件の特性に合わせて、予算のブレを許容できるか」を基準に選ぶことです。

FMが向いている物件・運用の特徴

FMが向いているのは、停止が許されない、または停止の影響が大きい物件です。例えば、来客の多い商業ビル、テナント入居率を重視するオフィス、住民の満足度が重要な分譲マンションなどでは、突発費用の発生よりも、復旧や交換が迅速に進む安心感が評価されやすい傾向があります。

また、オーナー側で修繕予算を平準化したい場合もFMは有効です。設備管理では「突然の高額請求が来る」ことが最も意思決定を遅らせます。FMはその不確実性を減らす契約であり、いわば保守費用の保険的な側面があります。

FMでも“全部込み”とは限らない

ここで注意したいのが、FMでもすべての部品が無制限に含まれるわけではない点です。契約書には対象部品の範囲や、適用外となる例外(災害・いたずら・過負荷・故意過失など)が必ず書かれています。FMを選ぶなら「何が含まれて、何が含まれないのか」を、部品名レベルで確認しておくことが重要です。

POGが向いている物件・運用の特徴

POGが向いているのは、設備の状態が良好で、交換がしばらく発生しにくい物件、または予算を柔軟に組める運用です。築浅で故障履歴が少ない、稼働頻度が比較的低い、利用者が限定的、といった条件では、POGの“固定費を抑えるメリット”が出やすくなります。

さらに、修繕をオーナー主導で計画的に行いたい場合にもPOGは相性が良いと言えます。例えば大規模修繕のタイミングでまとめて更新する方針があるなら、日常は点検を中心にし、更新投資は別枠で管理するほうが意思決定がしやすいことがあります。

POGで失敗しやすいのは「交換の先送り」

POGでよくある失敗は、部品交換が都度費用になるため、必要な交換が“先送り”されてしまうことです。異音や軽微な不具合が出た段階で手当てできれば小額で済むのに、判断が遅れた結果、故障が拡大し、停止時間も費用も大きくなるケースがあります。POGを選ぶなら、交換判断の基準(推奨時期・優先度)が明確な報告書と、提案の説明力を重視する必要があります。

独立系で増えている「中間型」の契約設計

近年、独立系メンテナンス会社を中心に増えているのが、FMとPOGの中間型です。例えば、戸開閉に関わる消耗部品や、停止リスクに直結する部品は包括し、交換頻度が低い長寿命部品は都度、といった設計が行われます。これにより、月額のムダを削りつつ、停止リスクの大きい領域は手厚くする、という現実的なバランスが取りやすくなります。

中間型を成立させる鍵は「履歴の見える化」

中間型を上手に機能させるには、点検履歴・故障履歴・交換履歴が整理されていることが前提です。履歴が曖昧なままだと、何を包括し、何を都度にするかの判断材料が足りず、結局“ざっくり”した契約になってしまいます。切り替え時には過去の報告書や交換記録を集め、どの部位が繰り返し不具合を起こしているかを洗い出すと、契約設計の精度が上がります。

独立系で増えている「中間型」の契約設計

迷ったときの考え方:3年スパンで比較する

FMとPOGの優劣は、1か月や1年では判断しにくいことがあります。エレベーターの部品交換は周期が長いものも多く、ある年に集中することもあります。そのため、比較は「3年スパン」を一つの目安にすると実態に近づきます。

例えば、POGの月額が大きく下がっても、3年の間に制御盤やドア装置周りの交換が発生すれば、総額は簡単に逆転します。逆にFMの月額が高くても、交換が多い期間に入っている物件なら、総額で見たときに安定する可能性があります。見積を依頼するときは、単年度ではなく数年の想定を置き、交換提案の前提も含めて説明してもらうと、判断がぶれにくくなります。

まとめ|契約方式は「安さ」ではなく「予算のブレ」と「停止リスク」で決める

FMは、突発費用を抑えて安定運用しやすい一方、固定費が上がります。POGは、固定費を抑えられる一方、交換判断と予算管理の能力が求められます。独立系を含めた複数社比較を行うなら、月額の差額だけでなく、交換提案の前提、契約範囲の明確さ、報告書の質まで含めて比較することが重要です。

契約方式は“選ぶ”というより“設計する”ものです。物件の現状と、運用で守りたい価値(停止ゼロ、予算平準化、長期修繕計画など)を言語化できたとき、最適な答えが見えてきます。

契約書で必ず確認したいポイント

FMでもPOGでも、契約書を“読むべき場所”は共通しています。ここを押さえるだけで、同じ月額でも実態がまったく違う契約を見抜けます。

対象範囲:部品名と作業名で書かれているか

「部品交換一式」「軽微な修理を含む」といった曖昧な表現は、トラブルの原因になります。対象部品が具体的に列挙されているか、また作業(調整・清掃・給油・測定など)の頻度が明記されているかを確認しましょう。独立系の見積でも、この粒度が高い会社ほど説明責任を重視している傾向があります。

免責条件:どこからが“別途”になるのか

災害・停電・浸水・いたずら・過積載・居住者の不適切使用など、免責条件は必ずあります。問題は、その範囲が広すぎないか、判断基準が示されているかです。免責が過剰に広いと、実質POGに近い運用になることもあるため注意が必要です。

緊急対応:初動の定義が明確か

「24時間対応」と書かれていても、電話受付のみなのか、一次対応(遠隔確認)まで含むのか、現地派遣まで含むのかで安心感は大きく変わります。初動の定義と、想定される停止時フローが文章で示されているかを確認すると、運用イメージが固まります。

見積依頼の段階で聞くべき質問

相見積りを取る場合は、条件をそろえることが大前提です。そのうえで、各社の“考え方の違い”を引き出す質問をすると、価格差の理由が見えます。例えば、過去の故障傾向を前提にした交換の想定、FMに含めるべき部品の考え方、POGでの提案・承認フロー、報告書のサンプルなどは、比較の軸として有効です。

契約方式は、単なる料金プランではなく、物件の価値を守るためのルール作りです。だからこそ、質問に対して具体的に説明できる会社を選ぶことが、結果的に費用と安全の両立につながります。

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