エレベーター防災仕様の進化:独立系が提案できる火災・地震対策強化事例

近年の大地震や火災事故を受けて、エレベーターの防災仕様は大きく進化してきました。しかし、1970~80年代に設置された古いエレベーターでは当時の基準のままで、現行の安全対策を満たしていないケースも散見されます。本記事ではエレベーターの地震・火災対策技術の進化を振り返り、独立系企業によるリニューアルで実現できる防災機能の強化事例を紹介します。古い設備の安全性向上に役立ててください。
エレベーター防災仕様の変遷
日本のエレベーター安全基準は、過去の震災や事故を契機に段階的に強化されてきました。大まかな流れとして、1981年(宮城県沖地震を契機)に耐震構造の見直し、1998年(阪神淡路大震災を契機)に巻上機固定やレール支持補強など耐震対策の強化、2009年(エレベーター事故多発や新潟県中越地震等を契機)に戸開走行保護装置(UCMP)と地震時管制運転装置の設置義務化、2014年(東日本大震災を契機)にさらなる耐震補強強化という節目があります。
例えば戸開走行保護装置とは、万一エレベーター扉が開いた状態で動き出そうとした際に補助ブレーキで強制停止させる装置で、1990年代後半から新設エレベーターに必須となりました。地震時管制運転装置は、地震の初期微動(P波)を感知すると主要動(S波)が来る前にエレベーターを最寄階へ自動停止させる機能で、2009年以降の新設機に義務化されました。これらは閉じ込め防止や走行中の急停止防止に大きな効果があり、国も既設エレベーターへの後付け改修を推奨しています。
しかしながら、こうした先進の防災機能を備えていない既存エレベーターもまだ数多く残っています。実際のリスクとして、古い機種では以下のような問題が指摘されます。
- 地震時の閉じ込め: 初期の地震ではエレベーターが通常運転を続け、大きな揺れで突然停止し閉じ込めが発生する恐れがあります。揺れを検知し自動停止する地震感知センサー(地震管制装置)が未搭載だと、乗客の避難が遅れリスクが増大します。
- 停電時の籠内閉じ込め: 非常用バッテリーや自家発電設備がないと、停電時にエレベーターがその場で停止し、乗客が閉じ込められてしまいます。長時間停電では救出に時間がかかり、熱中症など健康被害の懸念もあります。
- 戸開走行事故: 戸開走行保護(UCMP)装置がない古い機種では、制御故障によりドアが開いたまま動き出す重大事故のリスクがあります。
- 機器の耐震固定不足: 古い基準のままだと、地震で巻上機やガイドレールが緩んだり、釣合おもり(カウンターウェイト)が脱落する危険があります。
以上のようなリスクに対応するため、エレベーターの防災リニューアルが不可欠です。次章では、独立系エレベーター会社が提案できる具体的な強化策を見ていきましょう。

独立系による防災機能強化の提案事例
独立系のエレベーターリニューアル企業は、各種安全装置の後付けや防災対策工事に豊富な実績を持ちます。ここでは、独立系だからこそ柔軟に実現できる火災・地震対策強化の事例を紹介します。
- 地震感知器の後付け設置: 既存エレベーターにP波感知式の地震時管制運転装置を追加します。センサーと制御ユニットを後付けすることで、震度○程度の揺れを検知すると自動的に最寄階に停止・ドア開放する機能が実現します。この装置は自治体の補助対象となることが多く(例:浦安市では1基あたり最大50万円補助)、独立系業者が申請手続きも含めて導入をサポートしてくれる場合があります。
- 非常用電源・停電対応の強化: 前述の停電時自動着床装置(非常用バッテリー駆動装置)を後付けし、停電時の閉じ込めゼロを目指します。独立系・メーカー系問わず導入可能な装置で、多くの自治体が助成金を用意しています。バッテリーの設置スペース確保や配線工事も、現場を知り尽くした独立系ならではの工夫で対応してもらえます。
- 戸開走行保護装置の追加: 法改正前の古いエレベーターには、戸が開いたままの走行を防ぐUCMP装置を後付けします。独立系最大手の一社では、独立系で初めてUCMP装置の国土交通大臣認定を取得し、自社開発した装置をリニューアル工事に適用しています。メーカー系が対応しない機種でも、独立系なら既存機種に合わせてセンサー類や補助ブレーキを組み込み、安全性を大幅に向上させることが可能です。
- 昇降路・機械室の耐震補強: エレベーター機器類の据付強度を最新基準に近づける補強工事です。具体的には、制御盤をワイヤーで壁に緊結して転倒を防止、巻上機にロープ外れ止め装置を追加、ガイドレール支持ブラケットの増し締めや交換、釣合おもり脱落防止装置の設置などが挙げられます。独立系企業であれば、必要に応じた範囲でコストバランスを取りながら施工プランを調整してくれるため、「2014年基準相当の高度な補強は予算的に難しいが、せめて2009年基準レベルまでは高めたい」といった要望にも柔軟に応えてくれるでしょう。
- 火災対策機能の導入: 建物の防火設備と連動して、火災報知機が作動したらエレベーターが避難階へ自動移動し停止するよう制御盤を改修します。これにより火災発生時には速やかにエレベーターが初期避難モードとなり、健常者は階段で、車椅子利用者等は指定の非常用エレベーターで避難する体制が構築できます。独立系であればビルの消防設備業者と連携し、こうした火災時管制運転の後付け設定もスムーズに進められます。
以上のように、独立系エレベーター会社は現場の状況や要望に合わせたオーダーメイドの防災強化プランを提示できます。大手メーカーでは規格外とされた改造でも、独立系なら技術者の創意工夫で実現できるケースがあるのです。特に古い建物では予算や構造制約もあるため、「ここまではしたいがここから先は不要」といった微妙な線引きにも対応してもらえる独立系は心強いパートナーと言えるでしょう。
防災性能向上の効果と補助制度の活用
エレベーターの防災仕様を強化することは、居住者・利用者の安全安心に直結します。地震や火災時にエレベーターが適切に避難動作を取ることで、閉じ込めによるパニックや転落事故のリスクを大幅に減らせます。また非常時対応力の高いエレベーターは建物全体の防災評価を高め、資産価値向上にも寄与します。
さらに各自治体の補助制度を活用すれば、これら安全装置の導入費用負担を軽減できます。例えば東京都千代田区ではエレベーターの防災改修(手すり追加や段差解消等と合わせ、停電時着床装置や戸開走行保護装置の設置も対象)に対し工事費の1/3、1基50万円までの助成があります。大阪市や新宿区、港区の「エレベーター防災対策改修補助事業」など、全国の自治体で類似の助成金が設けられており、独立系業者に相談すれば最適な補助金情報や申請手続きもサポートしてもらえるでしょう。
災害に強いエレベーターは、建物の命綱として入居者の命と生活を守ります。独立系リニューアル企業の知見を活かし、ぜひ既存エレベーターの防災仕様を見直してみてください。最新の安全装置を適切に備えることで、万が一の際にも落ち着いて対処できる安心の環境を構築できます。


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