エレベーター点検DX導入で得られる省人化とBCP対応力強化

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エレベーター保守現場の人手不足とDXの必要性

日本全国で稼働するエレベーターの台数は100万台を超え、法令により年数回の定期点検が義務づけられています。しかし、少子高齢化に伴う熟練技術者の減少や新規人材不足により、エレベーター保守の現場では点検要員の確保が課題となってきました。現場の負担とリスクが増す中、品質を維持しながら効率化を図るために各社が注目しているのがDX(デジタル変革)の力です。DXの導入によって、「省人化(人手の削減)と安全性向上の両立」を目指す動きが活発化しています。例えば日立製作所は先端AI技術を活用した自動検査システムの導入を進めており、将来的に点検要員を半減できる可能性に踏み出しています。これは決して人手を省くことだけが目的ではなく、限られた人員でより多くの設備を効率よくカバーし、なおかつ保守品質や安全性も高めていく取り組みです。

また、エレベーター保守におけるDXは単なる業務効率化だけでなくBCP(事業継続計画)対応力の強化にも直結します。地震や停電などの災害時にエレベーターが停止・閉じ込めを起こした際、迅速に復旧・救出対応を行うことはビル管理の重要課題です。DXを推進しIT・AI技術と人の力を組み合わせることで、災害時のエレベーター停止に備える体制強化が可能になります。つまり、DX導入は平常時の省人化効果だけでなく非常時のレジリエンス(回復力)向上にも寄与するため、管理会社・ビルオーナーにとってメリットが大きいのです。

DX導入による省人化の具体的な仕組み

エレベーター点検業務へのDX適用がどのように省人化につながるのか、その具体策を見ていきましょう。まず中心となるのが遠隔監視・遠隔点検の導入です。IoTセンサーと通信技術によりエレベーターを24時間リモート監視できるようになると、従来は毎月現地で行っていた点検の一部を遠隔で代替可能です。例えば、独立系保守会社の中には月1回のリモート点検をサービス化し、有人点検+遠隔点検の二重体制へ進化させた例があります。遠隔で常時状態をチェックし異常兆候を把握できれば、点検回数自体を見直したり、点検に費やす人員を削減することができます。有人による詳細点検は必要な頻度で行いつつ、それ以外の常時監視はシステムに任せるというハイブリッド運用により、限られた技術者でより多くの台数をカバーできるようになります。

次にAIやデジタルツールの活用も省人化を支える大きなポイントです。AI画像解析や音響解析を使えば、これまで2人1組で行っていた作業を機械が補助することができます。実証実験では、エレベーター機器の動作音や振動パターンをAIが解析し異常を検知することで、点検作業の自動化を進めています。その結果、点検スタッフの最適配置(将来的には半減も目指せる)や人的ミスの低減検査精度の平準化が期待できるとされています。例えばかごの昇降検査で人が目視確認していた部分をセンサー+AI判定に置き換えることで、一度に複数台の検査を遠隔から行えるようになるかもしれません。さらに、保守員向けの専用スマホアプリも普及しており、現場でQRコードを読み取るだけで点検手順書やチェックリストを表示したり、点検結果を音声入力で登録するなど作業のデジタルサポートが進んでいます。こうしたツールは保守員一人ひとりの作業効率を上げ、結果的に同じ人数でより多くのエレベーターを管理できる省力化につながります。

省人化効果は管理業務にも現れます。DXによって点検報告書の自動作成・クラウド共有が実現すれば、事務処理に割く人手も大幅に削減できます。例えば、保守員がスマホで作業結果を登録すれば報告書が即自動生成されるため、事務スタッフが手入力・ファイリングする必要がなくなります。さらに請求書の発行や契約更新管理などもシステム化すれば、バックオフィス業務の効率化で人的コストを下げられるでしょう。

DX導入による省人化の具体的な仕組み

DXがもたらすBCP対応力の強化

エレベーターのDXは、災害や緊急時における対応力(BCP対応力)の向上にも直結します。まず、遠隔監視システムを導入していれば、地震発生時などに各エレベーターが自動停止した際、その情報が常時集中監視しているサービスセンターに自動発報されます。オペレーターやシステムはリアルタイムで全台の停止状況を把握し、閉じ込めが発生していないか、どの地区に応援要員が必要かを即座に判断できます。これは、DX導入前には各ビル管理人からの電話報告に頼っていた初動対応を大きく変えるものです。ITを駆使した管制センターでの常時監視と状況把握体制により、緊急時の情報集約と指示出しが格段にスピーディーになります。

さらにAIによる支援もBCPに貢献します。集約したエレベーター制御信号データをAIが解析し、故障原因や対応手順を現場エンジニアに即座に指示するといった試みも始まっています。これにより、復旧作業において経験の浅い技術者でも的確に対処でき、現場エンジニアの負荷軽減と復旧時間短縮につながります。例えば「地震時自動診断システム」があれば、震度情報と各エレベーターの状態から優先対応順位をAIがリスト化し、要救出の閉じ込め案件に迅速に人員を割り振ることができます。実際、業界大手では震度5強以上の地震発生時に閉じ込め救出1時間以内・全エレベーター復旧8時間以内といった目標を掲げており、DXによる監視・指示システムと各地の応援体制強化でその実現を目指しています。

また、建物オーナーや利用者への情報提供もDXにより向上します。前述のように、スマホアプリ等でオーナーが被害状況を確認できるようにしている企業もあり、復旧見込みなどを迅速に共有することで不安の軽減や的確な避難誘導に役立っています。DX導入各社では、非常時の連絡網整備やWeb受付システムの整備など、災害時でもサービスを継続するためのデジタルプラットフォームを構築しています。独立系JESの例では、東日本・西日本に分散した冗長サーバーでシステムを構築し、一方が被災してももう一方で全国のサービスを滞りなく継続できるBCP対策を講じています。このように、DXはエレベーターメンテナンスの強靭性(レジリエンス)を飛躍的に高めるのです。

省人化とBCP強化がもたらす相乗効果

エレベーター点検のDX導入による省人化とBCP対応力強化は、最終的に建物利用者の安全・安心と運用コスト最適化という相乗効果をもたらします。省人化によって適正な人員配置で効率的に保守が回るようになれば、人件費を含む保守コストの抑制につながります。その一方でDX活用により安全性はむしろ向上し、トラブルの減少や復旧時間短縮によって利用者のエレベーターに対する安心感や満足度が高まるでしょう。実際、AI・IoTを駆使したDXと人の力の融合によって「DX × 省人化 × 安全」の同時実現に踏み出す例が増えています。

もちろん、DX導入には初期投資やシステム運用の課題もありますが、それを上回る効果が各所で実証され始めています。人手不足や技術者高齢化という業界の大きな課題に対し、DXは継続的なソリューションを提供します。さらに、それに取り組むことで得られたノウハウは他の設備管理や建物管理全般のDXにも波及し、ビルメンテナンス業務全体の革新につながるでしょう。エレベーター点検DXは省人化とBCP強化の両面からビル管理を次のレベルへ押し上げる鍵として、これからも大いに注目される分野です。

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