遠隔監視による故障予兆検知の仕組みと導入効果

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遠隔監視で実現するエレベーターの予兆検知とは

エレベーターの「遠隔監視」とは、センサーや通信装置を用いてエレベーターの稼働データを24時間体制で収集・監視することです。これにより、人が現地にいなくても運行状況や機器コンディションを常時把握できます。遠隔監視の最大の特徴は故障の予兆検知です。稼働データの分析によって異常の兆候をいち早く察知し、実際に障害が起こる前に対処できるため、エレベーターの突然の停止や故障を未然に防ぐことが可能です。例えば、戸の開閉にわずかなズレや時間差が生じた場合、それがドア故障の前兆と判断され即座に警報が発せられます。ブレーキ装置の動作時間が通常より長引くなど微細な変化も検出され、安全性に影響を及ぼす劣化の兆しとして知らせてくれます。このように遠隔監視は人の目では捉えきれない小さな異常をリアルタイム検知し、保守担当者に通知する仕組みなのです。

また、独立系のエレベーター保守会社でも、メーカー系と遜色ない高度な遠隔監視サービスを提供する事例があります。たとえばジャパンエレベーターサービス(JES)の「PRIME」は複数の特許技術によりメーカーを問わず後付け設置が可能な遠隔監視システムで、エレベーター各社の制御盤に専用装置を取り付けてクラウドで稼働データを集中監視します。このシステムでは24時間365日、人の代わりにエレベーターを見守り、異常兆候を検知すると即座に管制センターへ通知することで迅速な対応を可能にしています。独立系ながら国内主要メーカーのエレベーター全般に対応できる点も注目すべきポイントです。

故障予兆検知が可能になる仕組み

遠隔監視による予兆検知は、エレベーター各部に設置されたセンサー群とIoT通信技術、そしてデータ分析アルゴリズムの組み合わせで成り立っています。具体的には、モーター電流値・振動・速度・戸の開閉位置・制御信号など様々なデータをエレベーター稼働中にリアルタイム取得し、それらをクラウド上の監視センターで常時モニタリングします。取得データは正常時のパターンと比較され、しきい値を超える異常や傾向の変化がないかがチェックされます。

例えば、日立製作所では遠隔診断装置「ヘリオス」によってエレベーターを定期運転させ、ブレーキの動作時間や巻上機(モーター)の負荷状況など主要機器を自動計測しています。その結果、ブレーキ内部の摩耗やトラブルの兆候を1/100秒単位の精度で検知することに成功しており、異常の予兆発見率は95%という高精度を実現しています。またドア開閉スイッチの動作位置も0.1mm単位で監視し、最もトラブルが起きやすいドアの異常をリアルタイムで把握しています。こうした高度なセンサー計測と分析技術により、「いつもと違う」わずかな変調を逃さず捉え、それが大きな故障につながる前にアラートを上げるのです。

独立系保守会社でも、自社で開発した遠隔監視システムを導入しこうした予兆検知を実現している例があります。サービスマンがタブレット端末で遠隔監視システムに常時接続し、異常を即時に把握できる体制を整えたケースもあり、メーカー系と同様に「異常の兆候を見逃さない体制」が構築されています。異常検知後の対応についても、遠隔監視システムと各地の保守拠点が連携することで最寄りの技術者を迅速に派遣できるスキームが作られています。このように、遠隔監視による予兆検知はセンサー計測から通知、そして出動手配まで一連の流れがシステム化され、人に頼らず自動で故障を未然防止する仕組みが確立されているのです。

遠隔監視導入による効果①:エレベーター停止トラブルの大幅減少

遠隔監視と予兆検知を導入することで、エレベーターの故障や停止トラブルは大幅に減少すると期待できます。実際、故障が発生する前段階で必要な保全作業を実施できるため、突発的な停止を抑制しエレベーターの止まりにくい環境を実現できます。日立ビルシステムの発表によれば、常時監視による遠隔点検へ進化したことで「故障の予兆を捉え、突発故障を抑制し、停止時間のミニマム化を実現した」とされています。これはつまり、予兆検知の導入前と比較してエレベーターの稼働停止につながるトラブル発生率が著しく軽減されたことを意味します。JESの事例でも遠隔監視サービス導入後は「故障発生率の軽減」が明確なメリットとして挙げられており、ビル利用者にとって煩わしいエレベーターの故障停止が減る効果が期待できます。

また、故障そのものの件数が減るだけでなく、万一トラブルが起きても被害を最小化できます。遠隔監視ではエレベーターに生じた異常を管制センターが即座に把握し、技術者へ状況を共有して迅速な初動対応が可能となります。例えば、「ドアに小さな異常を検知→エラー通報→技術者が駆けつけ調整」といった流れが人手介入なしに速やかに進むため、現地にスタッフが到着する頃には問題箇所の見当が既についておりスムーズな復旧が可能です。この結果、仮に停止トラブルが起きてもエレベーターの停止時間は極めて短く抑えられます。常時遠隔点検によって点検と点検の合間に起こる故障リスクを低減でき、万一の停止から復旧までの時間も短縮できる点は、導入効果として大きな価値があります。

遠隔監視導入による効果

遠隔監視導入による効果②:保守コストと利用者満足度の向上

遠隔監視による予兆検知は、故障削減によって結果的にコスト面や利用者満足度の向上にも寄与します。まず、故障が未然に防がれることで緊急修理や人件費の発生頻度が減り、保守コストの削減につながります。計画的な予防保全により部品交換も適切なタイミングで行えるため、無駄な修理費用が抑えられます。また停止トラブルが減少すれば、建物のテナントや居住者からの苦情・問い合わせ対応に費やす労力も減ります。管理会社にとって、エレベーターが止まらず安定稼働すること自体が入居者満足度の向上につながり、ビルの価値維持にも貢献するでしょう。

さらに、有人点検の一部を遠隔監視が代替することで点検作業の効率化も期待できます。24時間監視で異常がなければ無駄な緊急出動を避けられ、保守員の負担軽減と点検業務の省力化が実現します。実際、遠隔監視サービスを導入した独立系保守会社では「有人点検が減ることでエレベーターの停止期間が減少する」との報告もあります。これは、夜間や休日に交代で待機する人員を最適化できることや、頻繁な巡回をしなくても済むようになる効果を示しています。

最後に、遠隔監視によるデータの蓄積は将来的な改善にも役立ちます。蓄積データを分析することでエレベーターごとの弱点や経年劣化の傾向を把握でき、リニューアル(更新)の検討や保全計画の高度化につなげられます。AIを活用すれば予兆検知からさらに進み、劣化予測や最適なメンテナンス時期の提案も将来的には可能となるでしょう。このように遠隔監視と予兆検知の導入は目先のトラブル減少だけでなく、長期的な保守戦略の高度化にも寄与する点で管理会社・ビルオーナーにとって大きなメリットがあります。

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