独立系保守会社によるクラウド連携と多拠点モニタリングの実際

クラウド連携で広がるエレベーター保守の可能性
近年、エレベーター保守の現場でもクラウド連携がキーワードになっています。クラウド連携とは、エレベーターから収集したデータや保守情報をインターネット経由でクラウドサーバーに集約し、いつでもどこでもアクセス・連携できるようにすることです。これにより、地理的に離れた多数のエレベーターを一元的に監視・管理することが可能となります。特に独立系エレベーター保守会社において、クラウド連携は各地の拠点を結び全国規模でサービス提供するための重要な基盤となっています。メーカー系に比べて保守網をフレキシブルに構築できる独立系こそ、クラウドを活用したマルチ拠点モニタリングでその強みを発揮できるのです。
例えば、独立系最大手のジャパンエレベーターサービス(JES)では、独自のIoT遠隔監視システム「PRIME」によって全国の保守対象エレベーターをクラウドで結び、統合的に監視・管理しています。PRIMEが検知した各エレベーターの異常情報はすべて中央のコントロールセンターに集約され、そこでデータ管理・分析が行われます。その上で、異常が発生した際には即座に対応可能な拠点(支社・営業所)へ通知が飛び、サービス拠点と連携して迅速な対応が図られます。このようにクラウドを介した情報共有によって、広範囲に点在するエレベーター群を効率よく見守り、組織横断的に保守サービスを提供できる体制が整うのです。
多拠点モニタリングを支える仕組み
クラウド連携により、多拠点モニタリング(複数施設の一括監視)が具体的にどのように実現されているのでしょうか。ポイントは「現場のエレベーター」と「中央のクラウド」と「各地のサービス拠点」を結ぶ三位一体の仕組みです。
まず各エレベーターには遠隔監視装置や通信モジュールが取り付けられ、稼働データや異常信号を検知するとリアルタイムでクラウドサーバーに送信します。通信には専用の回線(携帯通信やVPN経由のインターネット回線)が用いられ、安全にデータが集められます。これらの現場データはクラウド上の監視プラットフォームに蓄積され、24時間体制でモニターされています。保守会社の中央管制センターではオペレーターやシステムが異常アラートを常時チェックし、同時に過去データとの比較分析も行っています。クラウド上には地図情報や設備情報もひも付いているため、異常検知と同時にどの建物のどのエレベーターで何が起きているかが一覧画面で把握できます。
次に、サービス拠点との連携です。クラウドシステムは各地域の保守拠点・技術者とも接続されており、異常発生時には担当エリアの待機技術者に自動通知が飛ぶ仕組みが取られています。例えば、ある都市で異常が起きれば、その都市の担当チームにスマホやタブレット経由で詳細情報が共有されます。技術者は現地に向かう前にクラウド上でエラー内容や機器の状態を把握できるため、必要な工具や部品を準備の上で出動できます。また一部の独立系企業では全技術者にGPS端末や位置追跡機能付きアプリを持たせ、クラウド上で常に各技術者の居場所を確認しています。その結果、最も近くにいる技術者を自動選定して急行させることが可能となり、対応スピードが飛躍的に向上します。このように、クラウドをハブにして現場設備~中央~各拠点が密接に結ばれているのが多拠点モニタリングの仕組みです。

独立系ならではのクラウド活用事例
独立系エレベーター保守会社はいくつかユニークなクラウド活用事例を打ち出しています。例えばエレベーターコミュニケーションズ社(EVcom)では、遠隔監視と連動した新サービスとして「かご内QRコード」システムを開発しました。エレベーターに閉じ込め事故が発生した際、利用者がエレベーター内掲示のQRコードをスマートフォンで読み取ると、クラウドを通じて**「現在保守会社の技術者がどこまで来ているか」を地図上で確認できる仕組みです。まさに「Uberのエレベーター版」のようなイメージで、クラウド連携により利用者とサービスマンの位置情報を共有することで生まれた安心サービスと言えます。元々これは技術者全員にタブレット端末を持たせて社内で位置共有していたシステムを、一般利用者にも開放した**独立系ならではの試みであり、現在このようなサービスを提供できるのは同社のみとのことです。
また、独立系最大手のJESでは前述のPRIMEシステムにより国内主要メーカーすべてに対応可能な遠隔点検サービスを実現しています。メーカー純正の遠隔監視は通常自社製品のみ対象ですが、独立系ならではの利点として異なるメーカーのエレベーターを統合監視するクラウド基盤を構築できている点は注目に値します。実際、PRIMEはメーカーの垣根を越えて後付設置が可能であり、旧式エレベーターにも柔軟に対応できるよう工夫されています。さらに災害時にも強いクラウドインフラを敷いており、東日本・西日本2系統のサーバーサイトで冗長化することで大規模災害時でもシステムがダウンしないBCP対策がとられています。これらは独立系保守会社が自社技術とクラウド活用で成し遂げた先進事例と言えるでしょう。
他にも、管理会社向けクラウドサービス「BMクラウド」を提供する企業では、エレベーター点検の見積取得から発注・報告・請求までをクラウド上で一元管理するプラットフォームを実現しています。このサービスでは、複数の建物にまたがるエレベーター保守情報を一括で把握でき、保守会社とのやり取り(見積・契約・報告)もオンラインで完結可能です。つまりクラウド連携によって、物件単位・企業単位でのエレベーター保守情報の統合管理が可能となり、管理会社にとっては利便性と透明性が飛躍的に向上します。
クラウド連携がもたらす効果と今後の展望
クラウド連携と多拠点モニタリングの導入効果としてまず挙げられるのは、対応速度の向上です。24時間クラウド監視×全国拠点連携により、どの地域でも異常時の初動が素早くなります。実際、独立系保守会社を紹介するEVパートナーズ社によれば、「異常発生時の駆けつけ対応はメーカー系より独立系の方が群を抜いて早い」とされます。メーカー系は抱えるエレベーター台数が膨大で一人の技術者が担当する台数も多いのに対し、独立系は負担が適正なため迅速対応に強みがあるといいます。これはクラウドを用いた効率的な人員配置も一因でしょう。前述のGPS活用のように、クラウドで技術者の位置や待機状況を可視化し最適配置することで、無駄な待機や遠距離移動を減らしつつスピーディーな対応が可能になります。
次に保守品質の均一化・向上も見逃せません。クラウド上にナレッジ(知見)が蓄積され、ベテラン技術者の経験や過去の対応履歴がデータとして共有されることで、各拠点の誰が対応しても一定水準のサービスが提供できるようになります。ある独立系では遠隔監視による月1回のリモート点検サービスを実施しており、これにより有人点検+機械点検の二重体制で安全性を確保しているとのことです。このように中央でデータを見ながら各現場を支えることで、属人的なバラツキが減り全体の品質底上げにつながります。
さらに、コスト面での効率化も期待できます。クラウド連携により紙報告の郵送や電話連絡の手間が省け、複数拠点で重複していた事務作業を中央集約できます。また異常の早期発見・早期対応により重大故障の発生や長時間停止を防げるため、長期的には修繕コスト削減にも資するでしょう。管理会社にとっては、各物件ごとの保守情報や費用をクラウドで統合管理できるため分析や予算立案が容易になるメリットもあります。
今後の展望として、クラウド連携はさらに進化し、エレベーターだけでなく建物内の他設備やサービスとも連携する可能性があります。例えば清掃ロボットやセキュリティシステムとエレベーターをクラウド経由で連動させ、人手を介さずロボットがエレベーターを自動利用して移動するような取り組みも始まっています。独立系保守会社が持つ柔軟な発想とクラウド技術を組み合わせることで、建物全体のスマート管理を支える存在へと役割が広がっていくでしょう。









